みうらじゅん氏は、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイ ブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある。週刊ポストに連載する『死に方上手』で同氏は、理想的といわれる“ピンピンコロリ”に疑問を呈する。
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“ピンピンコロリ”という言葉がある。年をとってもピンピン長生きをして、病気になったり寝ついたりせず、ある日突然コロリと逝ってしまう死に方のことだ。
家族に介護などの負担などをかけることもないことから、そういう死に方が理想的と考える人が多いそうだ。長野県佐久市の“ピンコロ地蔵”をはじめとして、全国各地にはピンピンコロリを祈願する場所も人気のスポットなんだとか。
確かに“ピンコロ”と聞くと、耳障りはポップで明るい。でもピンコロが実際にはどんな死にざまなのか考えたことはあるだろうか?
百歳を超えてピンピンの現役医師・日野原重明氏があるコラムで解説していたが、ピンコロにもっとも近い死に方は、心筋梗塞などの心臓疾患による突然死なのだそうだ。
ピンコロ=突然死。いや、そりゃそうなんだろうと漠然と思っていても、実際に現実を突き付けられると動揺してしまう。そうか、ピンコロって突然死なんだよね。でもこのことをピンコロ希望者は、本当に理解しているだろうか?
確かに、突然死んじゃうわけだから、家族に介護などの迷惑をかけることはない。でも、突然死ですよ! 2 日でも3 日でも危篤なり危ない状況が続けば、親類縁者も病床に集まるワケじゃない? そこで、最後のお別れ的な時間が作れるし、死に水をとってあげたりすることもできる。
ところがピンコロじゃそれもできない!
「死ぬ前に、もう一度会いたかった!」そんな知り合いが、ピンコロでは必ず一人は出てくるのではないか?
その一人にしてみれば、「なんでピンコロなんだ!?」と、突然死を恨むに違いない。それでもピンコロ死がいいというのだろうか?
※週刊ポスト2013年4月5日号