竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「突然、自宅が特別警戒区域に指定。価値も下がり困っています」という質問が寄せられた。
【質問】
去年1月に突然、拙宅(土地込み)を土砂災害防止法にのっとり特別警戒区域にしますという通知がきました。この家は平成13年9月に建築確認を得て着工しています。この指定により資産の価値は激減し、転売・転居も困難になりました。防止法と建築確認の整合性をどう解釈すべきでしょうか。
【回答】
この法律は、土砂災害から国民を守り、災害防止対策の推進を図ることなどを目的として、平成13年4月1日に施行されました。国が土砂災害防止対策の基本方針を定め、知事が5年ごとに調査をしつつ、順次、土砂災害で住民の生命身体に危害の恐れがある区域を土砂災害警戒区域と定め、その中でも著しい危害が生じる恐れがある区域を特別警戒区域として指定します。
特別警戒区域内では開発行為が制限され、建物構造も厳格化が求められ、危険な場合には退去勧告もあります。特別警戒区域に指定された場合には、地価も下がると思います。問題にしたいのは平成13年の建築確認ですか、それともこのたびの特別警戒区域の指定でしょうか。
前者であれば、建築確認当時には特別警戒区域の指定がなく建築確認上の特別な制限がなかったのですから、通常の条件で建築確認が下りても違法であったということはいえません。
仮に指定を急ぐべきといっても、国民の権利にかかわることですから、調査しながら指定していく過程に違法性を認めることは困難です。また、直ちに指定できるほど危険性がはっきりしていたのであれば、もともと危険性があって価値は低かったということになりますから、損害は認められないでしょう。
仮に今度の指定が間違っている場合、その指定を争うことが考えられます。この点は、土地の使用に具体的支障が生じるので行政処分性があり、半年以内に取消訴訟を提起できるとの考えと、実際の開発行為や建築確認の不許可処分を受けてからだとの二つの考え方がありえます。
しかし違法であれば、処分を争わなくても、損害賠償の請求が可能です。いずれにせよ、土砂災害の危険性という土木工学上の判断が必要です。専門家に相談してください。
※週刊ポスト2013年5月31日号