国内

死亡消費税 庶民苦しめる悪税で政府に並大抵でない税収増も

 6月3日、首相官邸で開催された社会保障制度改革国民会議で安倍ブレーンとして知られる民間委員の伊藤元重・東大教授から「経済財政の視点からの社会保障改革」という資料が提出された。増大する社会保障費の財源として、「高齢者医療費をカバーする目的での死亡消費税の導入」が提案された。

「死亡消費税」とは消費税のように国民全員に死ぬときに財産から一定の税率を“社会保障精算税”として納めさせるというもの。

 これが実際に導入されるとこんなケースが必ず起きる。長年、介護してきた父が亡くなった。息子は介護のために会社を早期退職し、妻のパートで食べている。貯金も底を尽いた。遺産として同居していた家が残ったものの、評価額は3000万円。そこに「死亡消費税」の請求が届く。消費税並みの5%なら150万円、消費税引き上げ後の税率10%なら300万円になる。とても支払えず、家を手放すことになった──。

 庶民を苦しめる悪税になるのは間違いないが、政府にとってはその税収が並み大抵のものではないのだ。

 日本の相続税は全体の4%の資産家に課税され、税収は年間約1兆2500億円(平成23年)。それを96%の非課税の層にも広く課税すると税収はケタが違ってくる。

 現在、個人金融資産は1545兆円。そのうち1000兆円近くを高度成長期を支えた団塊の世代をはじめとする65歳以上の約3000万人が保有している。

 そこに死亡消費税をかけるとどうなるか。65歳以上の世代が平均寿命を迎える今後15年間で、税率5%なら50兆円、消費税引き上げ後の10%だと100兆円の課税になる。国民の財産が大きく減らされ、国には途方もない金額が入ってくるのである。

 これは金融資産だけで、他に不動産資産がある。国税庁の統計では相続資産のうち預金や株などの金融資産と、宅地・家屋の不動産はほぼ同じ金額であり、不動産資産への課税額を加えると死亡消費税の課税額は2倍近く増える可能性もある。政府は国民医療費が現在の年間約40兆円から10年後には60兆円に増えると予想し、政府負担(約4分の1)を賄えないとしているが、この死亡消費税があれば十分おつりがくるのである。

 提案者の伊藤教授はそれをわかって提案したようだ。同氏はかつてこう書いている。

〈よく知られているように、高齢者は膨大な資産を持っている。(中略)ここに税をかけるのはどうだろうか。

 ただし、生前ではない。死亡時に課せばよい。資産を持っている高齢者も持たざる高齢者もいるだろう。しかし、高齢者全体で見れば、遺産相続税を重くすることで、現役世代の負担を減らすことができる。遺産相続人は自分たちの負担が増えると言うかもしれないが、そもそも資産は相続する人のものである以前に、高齢者のものではないだろうか。社会の貴重な資産が相続という形で一部の運のよい子孫に相続されるよりは、社会全体のために使われた方がよいという見方もあるだろう〉(産経新聞2008年5月3日付)

 アベノミクスで「景気回復」「収入アップ」など景気のいいことをいいながら、棺桶を掘り返す“墓泥棒”まがいの「死亡消費税」で庶民から税金をむしり取る算段をしているのだ。

※週刊ポスト2013年6月28日号

関連記事

トピックス

交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
イエローキャブの筆頭格として活躍したかとうれいこ
【生放送中に寝たことも】かとうれいこが語るイエローキャブ時代 忙しすぎて「移動の車で寝ていた」
NEWSポストセブン
優勝11回を果たした曙太郎さん(時事通信フォト)
故・曙太郎さん 史上初の外国出身横綱が角界を去った真相 「結婚で生じた後援会との亀裂」と「“高砂”襲名案への猛反対」
週刊ポスト
伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン