就職難で働けない子供、親のすねをかじることに味をしめて働かない子供……。いずれの場合でも、親は不安を抱え、悩んでいる。「育て方を間違えたのか」「どうして私の息子だけ……」――そうやって自分を責めてもはじまらない。我が子に今、親として何ができるのか。
「もし私たちが死んだり、認知症になったりしたら、息子はどうやって生きていくのか……」
63歳のAさんは言葉を詰まらせる。眉間に深く刻み込まれた皺が、苦悩の日々を物語っている。
Aさんの長男は今年35歳になるが、これまで一度も就職したことがない。20代の頃はコンビニなどでアルバイトをしていたこともあった。しかし、どれも長続きせず、この数年は「オレは仕事に向いていない」と部屋に閉じ籠もり、ネットやゲームをしてばかりいる。
「大学を卒業したばかりの頃は、“そのうちやりたいことが見つかればいい”と呑気に構えていた。それがいけなかったのか、本人は親のスネをかじるのが当たり前のような感覚になっていて、危機感が全然ない。
私は定年延長であと2年は働けますが、その後は年金暮らし。収入は格段に低くなります。もし私と妻が死んだら、その年金すらなくなってしまう。そうなったら子供の生活の面倒は誰が見るのか。そう思うと、不安で夜も眠れません」(Aさん)
「ニート」「フリーター」という言葉が流行り始めてから、10年、20年がたつ。しかし、その言葉の軽い響きとは裏腹に、親にのしかかる現実は重くなるばかりだ。就職氷河期の犠牲者である本人たちよりも、実はその親の方が苦悩が深い場合は少なくない。
父親の年代は、50代後半から70代。なかには心労から体調を崩したりしてしまう親もいるという。
※週刊ポスト2013年6月28日号