スポーツ

甲子園の球場整備の名人 マウンドに唾吐いた江夏豊氏を叱責

 阪神タイガーズの本拠地・甲子園球場は、日本でも数少ない天然芝使用の野球場。カクテルライトに映える美しい天然芝が魅力のこの球場を整備する「阪神園芸」の名グラウンドキーパーについて、スポーツライターの永谷脩氏が綴る。(文中敬称略)

 * * *
 国民栄誉賞を受賞した松井秀喜が甲子園にやってきた。自分の野球人生のターニングポイントとなったこの場所を第二の人生のスタート地点としたのだが、その時「甲子園のグラウンドはどうしてこうも綺麗なんだろう」と話していた。甲子園の管理を行なうのは「阪神園芸」という阪神電鉄系列の造園会社である。同社には名物グラウンドキーパーといわれた、藤本治一郎がいた。

 村山実が初めて阪神の監督に就任した1970年、藤本は関西に上陸中の台風の影響が心配で、暴風吹きすさぶ中、甲子園へと急行した。その際、球場でバッタリ村山と鉢合わせ、それがきっかけで村山は藤本を深く信頼し、色々なことを相談するようになった。

 その高いプロ意識故に、選手には厳しい一面もあった。砂塵舞うマウンドで口に砂が入り、ツバを吐いた江夏豊を、「命よりも大切なグラウンドじゃろが」と怒鳴りつけたこともある。以来、江夏はロージンバッグまでそっと丁寧に置くようになった。

 川藤幸三も守備位置につくときにラインを踏んだところ、「仕事場を大事にせい」と怒られている。次からはラインをキチンと跨ぎ、一礼してから入るようになったが、その時に藤本の方を見ると、「親指と人差し指で○を作ってくれた」と言う。

 プロだからこそわかる、プロの技術を持っていた。翌日の先発投手が投げやすいよう、試合後に1人残って、マウンドの硬さや傾斜を変えていた。まだ予告先発などなかった時代だが、藤本の予想はピタリと当たる。阪神の投手陣は藤本が作るマウンドによって、どれだけ気分良く投げられたことだろう。江夏はじめ阪神の投手陣は「あのオッサンにだけはウソがつけない」と言ったものだ。

※週刊ポスト2013年8月30日号

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン