9月13日、午前6時すぎ。京都市東山区にある華頂短期大学構内で凄惨な殺人事件が起きた。警備員の白江義彦さん(58才)は出血性ショックで死亡し、京都府警東山署は住所不定無職の大迫真一容疑者(22才)を現行犯逮捕した。
大迫容疑者は警備員を一方的に殴り続けた。被害者が地面に倒れこんでも躊躇することなく、執拗に頭部を蹴りまくる。やがてピクリともしなくなった白江さんの左側頭部は激しく陥没し、現場は血で真っ赤に染まっていった。
無抵抗の警備員を一方的に暴行し続けた無慈悲な殺人に、当初は怨恨も疑われた。しかし、双方に面識はなく、大迫容疑者は取り調べに平然とこう答えた。
「大学の地下駐車場で一夜を過ごし、朝起きて散歩していたら、警備員に“敷地内から出ていってくれ”と注意され腹が立った。最初から殺すつもりで殴った」
白江さんは警備員としての職務を果たしただけ。それを腹が立ったという理由で殺す。このあまりに理不尽な言い分には、驚くばかりだ。
京都市内に住む白江さんの妻は、本誌の取材に憔悴しきった声を絞り出した。
「突然のことで、思い出したくないんです…」
ごく普通の生活を送っていた夫婦を突然襲った大きな不幸は、他人事ですまされない。臨床心理学者でこころぎふ臨床心理センター長の長谷川博一さんは、この事件について、現代社会の殺人事件の典型だと指摘する。
「この事件では、不満を抱えていた容疑者が警備員に注意され、邪魔されたと思い、発作的に感情が爆発したのでしょう。
今の時代は潜在的な怒りを蓄積させている人が多い。そうした怒りは、些細なきっかけでまったく関係のない人に向かい、爆発的な暴力となってしまうことがあるのです」
いわば、誰もが加害者にも、被害者にも、いつなってもおかしくない、そうした恐るべき可能性を秘めた社会になっているといえそうだ。
※女性セブン2013年10月10日号