石碑の建立が予定された共同墓地を訪れてみると、草原のなかに墓石が並んでいる。そのなかの周囲を真新しい砂利で囲われた一角に、ベニア板で覆われた四角い箱があった。ここに高さ2メートル以上の石碑を建て、「記憶 継承」などの文字を刻む予定だという。

 石碑は、韓国の政府機関に日本の市民団体や一部の地元村民が協力する形で計画が進められてきた。

 共同墓地の関係者は、「遺骨の発掘調査にはみんな協力的だったけど、そのあと韓国の人たちや市民団体がどんどん入ってきて、資料を見せろ、確認させろと騒がしくなってきた。それで地元民はだんだんお付き合いしなくなった」という。

 地元で石碑の実行委員会の共同代表を務める水口孝一氏が一連の経緯を説明する。

「村がまったく知らなかったはずはないんですが、自分たちもしっかり申請していればよかったし、石碑に入れる文言をすりあわせたりする必要もあったかと思います。(日本の)市民団体が『強制労働』という言葉にこだわり、騒動で文言の入ったプレートを外すことになりました。

 そもそもは(韓国政府機関の)委員長が昨年4月に韓国から来て、『形に残したい』という話が出た。今年の9月はじめに再び委員会から『部署がなくなるかもしれないから、急いで作れないか』と打診が来て、地元民として以前、遺骨の発掘調査を手伝っていたし、犠牲になった人たちを忘れないという思いはあるから、お手伝いすることにしたんです。

 ただ、こうした騒ぎになると、政治的に利用されたという側面も、おっしゃるとおり多分にあるのかもしれません」

 石碑は、韓国から石を送ってもらい、文字を彫るなどの費用も含め130万~140万円ほどの実費を、韓国の政府機関が負担する予定になっていたという。石碑はほとんど完成しており、今後改めて除幕式が開かれるのか、計画が中止されるのか、現段階では決まっていない。

※週刊ポスト2013年12月20・27日号

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