景気は上向いてきたが、まだ実感は薄い。だから国民目線で見れば、2014年の重要政策課題は、やはり「経済再生」である。そんな中、昨年末の臨時国会で「もしかすると大化けするかも」と思わせる1本の法案が成立した。
それは「国家戦略特別区域法」だ。特定秘密保護法をめぐる騒動で陰に隠れてしまったが、日本の先行きを占う意味では、実はこちらのほうがはるかに重要である。
法律の中身をみると、たしかに一読して理解しにくい。それは単刀直入に「特区ができれば、こんな素晴らしいことが実現します」と書いてあるわけではないからだ。
そうではなく、内閣総理大臣を議長とする特区諮問会議を設けて、区域ごとに特例措置を盛り込んだ計画を策定、それを総理が認定する。そういう「枠組み」を作ります、と書いてある。実は、この枠組みこそが肝心なのだ。
特区諮問会議とは何か。暮れも押し迫ってから、ひっそりと5人の民間議員が発表された。産業競争力会議の民間議員を務めた竹中平蔵慶大教授や八田達夫阪大招聘教授、坂根正弘コマツ相談役らである。これに安倍首相と菅義偉官房長官、新藤義孝国家戦略特区担当相(総務相)らが加わって、各省と具体的な改革メニューを協議する。
今回の特区諮問会議も顔ぶれからみて、当時の経済財政諮問会議と同じような役割を果たす可能性が強い。
法律に書かれた具体的な規制改革案件は旅館業法や医療法、建築基準法、道路法、農地法などの扱いだ。たとえば、注目の農業では農業生産法人の役員要件緩和などが盛り込まれた。
外国企業が参入しやすくするために雇用条件を明確化したり、有期雇用の特例を特区にとどまらず全国レベルに拡大して検討する条項も盛り込んでいる。このあたりは特区の挑戦を全国の先駆けにする意図が明確である。
規制改革の話は特区であれ全国であれ、微に入り細にわたるので地味で目立たない。一方、マスコミは華々しいケンカが大好きだ。諮問会議は7日に初会合を開いた。「全国3~5か所」とされる特区の具体的な地域も3月に決まる。ここは注目である。
(文中敬称略)
文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)。
※週刊ポスト2014年1月24日号