1月18、19日の2日間、いよいよ大学入試センター試験が実施され、本格的な受験シーズンが幕を開ける。
今年のセンター試験出願者は、前年比2.2%減の56万670人。少子化で18歳人口が年々減り続けていることを考えれば、少しでも偏差値の高い大学を狙おうと意気込む受験生が増えてもおかしくない。だが、現実には「超安全志向」なのだという。
受験情報に精通する大学通信常務取締役(情報調査・編集部ゼネラルマネジャー)の安田賢治氏が、その理由を挙げる。
「昨年のセンター試験は難問が多く、平均点が文系で前年度比40点、理系でも34点減と5教科7科目になった2004年度以降もっとも低かった。そのため、今年も去年並みに難しいのではと不安になっている受験生が多いのです。
さらに、今年は『ゆとり教育』の過程で行われる最後のセンター試験。来年からは数学と理科で受験科目が変更になるので、浪人すれば新たに覚えなければならない内容も増える。より確実に現役合格できる大学に志望者が流れる可能性が高いでしょう」
そこで狙い目となるのが、「どうせ受からないだろう」と初めから敬遠されがちな難関国立や私立大学。特に人気のない文系学部は背伸びしてでもチャレンジする価値はあるという。前出の安田氏が続ける。
「国立では東大のみならず、一橋あたりも同じ難関校としてボーダーライン以下の層は無理な受験を諦める傾向にあります。また、ここ数年“理高文低”が顕著で、就職に有利な理系や、建築・土木などの工学系に人気が集中しています。そう考えると、東大の文Iや社会科学系学部の多い一橋だって穴場になるかもしれないのです」
センター試験を利用した国公立大学で“アンパイ”の合格者が次々と出れば、自然に私立大学の併願者は減ってくる。しかも、安全志向は難関私立大学でも同じだ。
「早稲田や慶応が受験者数を減らしているだけでなく、その下のMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)でさえ、昨年はセンター試験の平均点が下がったにもかかわらず国立との併願者がさほど伸びませんでした。
つまり、受験生はもっと下のクラスを押さえにしているのです。だから私立でも文系のトップクラスである早稲田の政経をはじめ、難関私大の文系学部は例年より合格しやすい状況といえるのです」(安田氏)
いずれにせよ、今年のセンター試験は目標とする平均得点率60%に戻すため、昨年難しかった「数1A」や「国語」の問題を易しくし、平均点は確実に上がるというのが大手予備校の大方の予想である。となれば、学費も安い国公立志向にますます拍車がかかるはず。
その一方で、難関校の門戸が広がることは受験生にとってはありがたいものの、定員割れを起こさずに優秀な学生を集めたい私立大学の悩みはしばらく続きそうだ。