『マグロ船で学んだ人生哲学』(講談社刊)著者で、人材コンサルタント会社社長・齊藤正明さんは、2001年6月から43日間、鮮度保持剤の研究のため、遠洋マグロ漁船で暮らした。向かった先は赤道付近。海の男たちと過ごした濃密な日々を語ってもらった。
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九州・大分から船に乗り、赤道付近の漁場まで約10日かけて行き、約20日間漁をして、日本に帰ってきました。とにかく船酔いがひどくて、吐かなかったのは3日間だけでした(笑い)。
私は、漁をしませんでしたが、漁師の労働時間は朝6時から翌朝3時まで。実質労働時間は16~17時間ほどでした。とにかく過酷な労働というのが偽らざる実感です。
マグロ三昧で、まだドクドク動いている心臓を食べさせてもらいました。あわびのようなコリコリとした食感と味でした。
睡眠時間は、3時間ほどしかないんですが、寝室が狭いので熟睡できません。長さ180cm、幅60cmのベッドだから、漁師の中には、体を折り曲げて寝ている人もいました。
船には、お医者さんがいません。一度、風邪を引いたら、2年前に期限が切れた鎮痛剤を「のんどけ!」と言われたことが…。病気やけがをしないことも立派な仕事のひとつなんです。
乗船員たちは、たばこを吸う人が多かった。でも、軍手をした濡れ場での作業のため、簡単には吸うことができない。
そこで、若手の漁師は、人数分のたばこを一気に口にくわえて火をつけて、先輩漁師の口に次々と入れていました。
【マグロ遠洋漁船の1日】
●午前6時~午前11時
起床後、すぐさま投縄開始。約100kmの長さの仕掛けを海に設置していく。
「作業の間、乗組員9人が交代で朝食兼昼食を食べます。おかずは、マヨネーズをたっぷりかけたマグロの刺身でした」(齊藤さん・以下「」内同)
●午前11時~正午
揚げ縄(マグロの引き揚げ)の準備。
「洗濯やシャワーもこの時間にします」
●正午~午後3時
船を止めて、マグロが仕掛けにかかるのを待つ。
「仮眠時間でもあります」
●午後3時~午前3時
揚げ縄作業。
「平均30分に1匹がかかるので、次々と船に揚げていきます。入れ食い時は、徹夜作業になりますし、かからない時は、何時間もかかりません。この間、夕食は交代でとります。冷凍食品のわらじ大のとんかつやマグロの胃袋が入ったカレーでした」
●午前3時~午前6時
就寝。
※女性セブン2014年1月30日号