大下:小泉さんは総理を5年5か月もやったから、もう“成仏”してるけど、彼は9か月しかやっていないから、成仏していないんですよ。その点では、1年で辞めた安倍さんと似ている。

森田:確かに。ただ、首相としての細川さんには米の輸入自由化を実現したという大きな功績がある。

大下:あれは細川さんでなければ、できなかった。なぜなら、天皇=米というほどに、皇室にとって米は重要な存在なんです。天皇は新嘗祭で米を神に捧げる、それは天皇にだけ許されたことなんです。だからこそ、細川さん以外の人が米に触ったら、右翼にやられていたかもしれない。

森田:彼は近衛家の娘である母親の家で育ちましたが、近衛家は藤原鎌足を祖とし、五摂家の筆頭として天皇とも血がつながってくる。細川家はその近衛家とつながったことで、格がグッと上がりました。その第一子の護熙氏ですから、彼は本質的には、いわば御簾の内側にいる宮廷政治家です。天皇家とつながりがある細川さんだから、米の自由化を実現できたわけです。

【プロフィール】
●森田実(もりた・みのる)1932年生まれ。政治評論家。近刊に『「橋下徹」ニヒリズムの研究』(東洋経済新報社)。

●大下英治(おおした・えいじ)1944年生まれ。作家。新刊に『小泉純一郎「原発ゼロ」戦争』(青志社)。

※週刊ポスト2014年1月31日号

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