団塊世代の退職者がピークを迎える今年、シニアライフに向けた「地域デビュー」を果たす人も多いが、すんなりと地域に溶け込めるとは限らない。都内在住のA氏(67)は、大手飲料メーカーを退職後、妻の勧めで自治会に参加した。そこで任されたのは廃品回収で、資源品を分類して自治会費を捻出するという役割だった。自治会関係者がA氏が馴染めなかった時の様子を語る。
「Aさんは現役時代の会社名や役職にこだわっていたのか、“俺はお前らと違う”という感じで、他の人とは一言も会話をせず、黙々と作業していました。
丁度、その時期は暮れも押し迫った頃で、自治会では地域の人を招いて豚汁などを振る舞う恒例の餅つき大会の準備を進めていたんです。
すると、Aさんは地域の掲示板や飲食店などに貼る告知のポスターを見て、作成した男性に『こんなんじゃダメだ。広報部長をやっていた私が作り直します』といったんです。
“自分の仕事はこれだ”と思ったんでしょうが、『やらせてください』ならまだしも、上から目線に周りも自然と避けるように。居づらくなったのか、Aさんは自治会に来なくなってしまいました」
地域のボランティア団体にも“新米”なのに偉そうに振る舞う人が後を絶たないという。
「退職直後の人はビジネスマン時代のクセが抜けないんでしょう。現役時代の名刺を配りまくり、『自分は仕事柄、豊富な人脈があるので、何でもできる』ということをアピールする男性もいます。
なかにはNPO法人にすることを提案し、会社時代の約款を持ってきて、勝手に会則を変更しようとする人もいた。さすがに私たちも『ここは会社じゃない。有志の集まりなんだから縛られたくない』と猛反発したところ、その男性はへそを曲げて来なくなりました」(地域のボランティア団体幹部)
自治会に入ったばかりのB氏(62)も、そんな振る舞いを自省するひとり。
「近所の人が亡くなった際、『葬式は自治会で仕切るから』といわれ、会社時代のイメージで受付でもやるんだろうと思って喪服を着ていったら、『アンタ、何考えているんだ』と怒られた。
よく見れば自治会の人は普段着や作業着で会場の設営をし、奥さん連中もエプロン姿で料理作りや配膳をしていた。完全な裏方に徹していたんです」
※週刊ポスト2014年2月7日号