• TOP
  • 特集
  • タモリ論著者が挑む「究極の純愛官能小説」第1回を全文掲載

特集

2014.02.15 15:59  週刊ポスト

タモリ論著者が挑む「究極の純愛官能小説」第1回を全文掲載

『タモリ論』『民宿雪国』の著者として知られる樋口毅宏氏が、週刊ポスト2014年2月14日号より、究極の純愛官能小説「愛される資格」の連載をスタートさせた。その第1回を全文掲載する。

【著者プロフィール】
■樋口毅宏(ひぐち・たけひろ):1971年、東京都豊島区雑司ヶ谷生まれ。出版社勤務を経て『さらば雑司ヶ谷』で小説家デビュー。主な著書に『雑司ヶ谷R.I.P.』『日本のセックス』『民宿雪国』『テロルのすべて』など。昨年、初の新書『タモリ論』がベストセラーに。

 * * *
J・Wへ──
【第一部 修羅の道へ】

 愛の戦場に兵士として初めて打って出ようとする者は、まず第一に、愛する対象となる相手を探すべく努めることだ。次いで心を砕くべきは、これぞと思う女性を口説き落とすことである。三番目には、その愛が長く続くよう努めること。これが私が設けた限界点である。私が駆る戦車もここに沿って轍を刻むことになろう。これこそが全速力で突っ走る私の戦車が突進すべき標柱である。

(『恋愛指南 アルス・アマトリア』ププリウス・オウィディウス・ナソ 前四三年─紀元一七年あるいは一八年。沓掛良彦訳。岩波文庫)

 *
 ホテルには別々に、時間差で入った。

 関係が始まった頃は、同じホテルは二度使わないと慎重だったのに、今では「勝手がわかる」「使いやすいから」と、ここ最近は湯島にあるラブホテルを愛用していた。兼吾の住む三軒茶屋からは遠くて不便なものの、普段は湯島に行く機会もないし、知人や関係者にも会うこともなさそうだからだ。

 湯島天神を横目に、急な勾配の坂道を上る。二、三度一緒に秀子と境内に足を踏み入れたことがあるが、二月は合格祈願の絵馬が鈴なりで、熱の伝わってくるその文面と量に圧倒された。本当は訪れるたび参拝したいが、邪な願いを菅原道真が叶えてくれるはずがないと兼吾は思う。

 兼吾はこの坂道を上るたび、期待と不安の混ざった胸の高鳴りを感じる。慣れることはない。桜がすべて散った後のひっそりとした木々の下を彼はすり抜けていく。

 目隠しの受付を過ぎて部屋に入ると、秀子は先にシャワーを済ませていて、全身にバスタオルを巻いた格好で立っていた。

「遅かったね、ケンちゃん」

 秀子の弾んだ声に、兼吾は内心安堵する。きょうも彼女と会えて良かったと思う。シャワーの後なのに秀子の髪が濡れていないのは、この後家に帰るからだ。兼吾は顔に笑みを張り付けているが、それに気付いて内心は複雑な気持ちに駆られる。

「アレを家に忘れたことを思い出して」

「アレって?」

 兼吾は秀子に抱きつく。布越しに柔らかな乳の感触が伝わってきて、彼女の耳元に鼻を近づけると、欲情をそそられるいい匂いがした。顔を合わせて数秒で、ペニスの硬度がぐんぐんと増していくのがわかる。

 火が点けられたような気がして、兼吾は秀子のタオルを剥ぎ取った。きょうも乱暴にやってやろうと思ったのだ。

「いやっ!」

 秀子はその場に座り込む。手と腕は辛うじて胸と股間を覆っているが、色白で肌理が細かい肌と、細いのになだらかな身体の線は隠しようもない。年齢の割には均整の取れた体型を維持していた。

「いや、返して! お願い!」

 幾度も身体を許した仲なのに、何を今さらと兼吾は思う。

 兼吾が後ろ手にしたタオルに、秀子は必死になって手を伸ばすたび、片方の手から漏れたピンク色の乳首や、慎み深い茂みが露わになる。

関連記事

トピックス