宮城県の村井嘉浩知事も会見で各地の住民の要望に対しこう強調した。
「住民の皆さんが『この高さがいい』と言っても、どう考えても命を守れない場合は、分かりましたとは言えない」
さる2月15日には“ハイテク堤防”の建設も決まった。宮城県の気仙沼湾内湾地区では4.1mのコンクリート堤防の上に、津波の際には水圧で高さ1mの鋼鉄製の扉が自動的に立ち上がる「フラップゲート」を付ける仕組みを採用することになった。堤防の内側は2.8m盛り土されるため、見かけの防潮堤高は胸の高さほどの1.3mになる。フラップゲートの工事費は1mあたり約250万円とコンクリートの25倍になる。
防潮堤事業は「命を守るため」と言えば、いくらでもカネを使える打出の小槌なのだ。 東京大学生産技術研究所の太田浩史講師(都市再生学)は「防潮堤ありき」の復興事業をこう批判する。
「津波防災には、高台移転や防災道路などいろいろな方法がある。防潮堤はあくまで選択肢のひとつ。本来なら各地で防災計画、避難計画を先に策定すべきだったのに、国の中央防災会議は3.11の直後(2011年6月)に防潮堤建設を提言し、震災から半年後には各地で建設計画がまとめられた。
急いで決めたからシミュレーションは粗いし、高さの根拠も不十分。自治体は防潮堤建設を前提に災害危険区域を指定したから、高さを変更すると防災計画全体を見直さなければならない。だから頑なに計画の高さを変えようとしない」
※SAPIO2014年4月号