病気は、何も人間ドックや健康診断で見つかるものばかりではない。体が発する「痛み」というSOSに耳を澄ますことで、発見できる病気もある。
痛みにいち早く気づくことができれば、死という最悪の事態を回避できるかもしれない。逆をいえば、痛みのサインを感じ取れなければ、死に至る可能性もあるということだ。
たとえば「クモ膜下出血」。クモ膜下出血は強い頭痛を伴うが、その特徴は「突然、後頭部をバットで叩かれたかのような激痛」だ。そこまでの激痛でなくても、軽い頭痛で検査をしてみるとクモ膜下や脳内の別の場所に出血が見つかったというケースは少なくない。
このように、頭が痛ければ脳の病気を、お腹周りが痛ければ内臓周辺の異常を、と痛みの近くの病気を疑うのが基本だ。
しかし注意したいのは、たとえば「肩痛」や「腰痛」といった「普通の中高年ならよくある痛み」が、そこからは全く予想も付かない大病のシグナルでありうることだ。このような「気づきにくい兆候」が特に多いのが心筋梗塞・狭心症だ。
50代男性・Aさんは、意外な部位の痛みからいち早く狭心症に気づき、九死に一生を得たという。
「最初の違和感は歯の痛みでした。虫歯のようにキンキン痛いというよりは、ズキーンと重い感じ。歯医者に相談したところ“内臓疾患で歯痛が出ることがある”と、内科の受診を勧めてくれたんです。半信半疑で医者に相談し、念のため心電図をとると“狭心症の疑いがある”といわれた」
循環器系の専門病院で再度検査すると、冠動脈が90%詰まっており、Aさんは狭心症と診断された。
「いつ心筋梗塞を発症してもおかしくないといわれ、すぐに入院・手術へ。カテーテルで血管内を拡張し、再び狭窄するのを防ぐためステントと呼ばれる金網を取り付けました。幸運にも早期発見ができてよかった。今は食事制限に取り組んでいます」
※週刊ポスト2014年3月28日号