明治・食機能科学研究所では、浅見幸夫さんを中心とするチームが、どのようなメカニズムで腸の老化が抑制されるかを検証した。
「腸管は、『腸上皮細胞』が並んでいます。若く健康なうちは、この細胞から“抗菌ペプチド”という抗菌物質が正常に分泌されて“腸管バリア”を作り、細菌やウイルスなどの有害物質が腸に侵入しないよう、守っています。
ところが高齢になると、抗菌ペプチドの分泌量が減ってきます。このため腸管バリアが薄くなって、有害物質が腸内に侵入したり、細胞が炎症を起こしたりと、悪影響を受けやすくなるのです。高齢のマウスにLB81乳酸菌を使用したヨーグルトを一定量(ヒトに換算すると毎日ヨーグルト100~150gに相当)摂取させたところ、抗菌ペプチドの発現量が若いマウス並みに回復しました。また、腸に炎症を起こしたマウスでも、症状が軽くなりました」(浅見さん)
基調講演を行なった順天堂大学医学部・小林弘幸教授は、腸の健康と全身の健康との関わりについて、私たちにとって身近な問題である“便秘”を例にこう解説した。
「たかが便秘と思われがちですが、実は便秘は全身の健康をおびやかす、非常に深刻な病気です。便秘になると結腸がんのリスクが上がることもわかっていますし、海外の研究では、便秘になるとQOL(生活の質)や労働生産性が落ちるというデータも出ています。
便には、体にとって不要な物質が含まれています。それが体内に長く留まれば、腸管から有害物質が吸収され、血液にのって全身の細胞に運ばれ、さまざまな身体の不調の原因となるのです。ですから、健康を保つには、腸の健康が不可欠なのです」