こうしたノンカフェイン市場拡大の背景を、飲料総研取締役の宮下和浩氏に聞いた。
「特定保健用食品(トクホ)飲料が人気を博すなど、中高年齢層や女性を中心に、健康意識が高まっていることがまず挙げられます。それからカロリーオフやカロリーゼロ飲料が広がったことで、マイナスの付加価値、あるいは引き算の付加価値、とでもいうべき価値観が定着したこともありますね。お茶やコーヒーは、本来カフェインを楽しむ飲み物とも考えられますが、それをあえて引くことが、プラスとして受け入れられているようです」
メーカー側にとっては、店頭での棚取りをリードするための戦略の一つでもあるようだ。
「いま、コンビニやスーパーではPB(プライベート・ブランド)商品が好調で、メーカーの棚取り競争は厳しくなっています。他の商品と差別化をしないと、すぐに店頭に置いてもらえなくなる。たとえば『生茶』の昨年の出荷は1800万ケース(1ケース30本換算)。これは、緑茶飲料トップの「おーいお茶」(伊藤園、8470万ケース)の約5分の1で、苦戦している。そんななか、“ノンカフェイン”という切り口は、目新しさを出す一つの売りになっていると考えられます」
最後に、今後、ノンカフェインが根付くためのポイントを聞いた。
「3、4年前から、コーヒーなどを中心にカロリーオフやカロリーゼロ商品が広がりましたが、現在では下火です。やはり最後は“味”。最近はカフェインを抜く技術が発達し、味や香りの良いものが出てきているようですね。トレンドが次々に入れ替わる飲料業界で長く愛されるには、美味しいことが何より大事です」
花より団子ではないが、飲むなら美味しいものを飲みたいのが人情。体に良いノンカフェイン飲料の味の進化を期待したい。