冒頭で挙げた地名はそれぞれ『ガールズ&パンツァー』(大洗町)、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(秩父市)、『おねがい☆ティーチャー』(大町市)、『けいおん!』(豊郷町)、『秒速5センチメートル』(種子島)の“聖地”となっている。なかでも大洗町は作品と共に昨年、観光庁から若者旅行を応援する取組表彰を受けた。
しばらく前から、観光業界では旅行者が多様化してニーズが読み切れず、ツアーなど旅行商品をつくれないことが問題になっている。閉そく感のある状況の中、アニメ作品を軸とした「聖地巡礼」は観光の新たな形を生みだすヒントになりそうだ。
「以前は、休みの日が決まっていてそこにあわせて旅行をしようという意思決定をしていた。ところが今では、興味を中心にした観光、コンテンツツーリズムが広がっている。まず好きなものがあって、その好きなものを楽しむためにどうやって休みをとろうかという順に決めているのです。
『らき☆すた』で大勢の人が訪れるようになった鷲宮ですが、いまでは作品と直接、関わりがないコスプレイベントなども開かれています。もはや『らき☆すた』の聖地だということを知らずに参加している人までいます。そして鷲宮を訪れると人間らしいコミュニケーションができるとリピーターになる人が少なくない。こうやって地域がそれぞれにキャラ立ちしてゆくことが、これからの観光には大事な要素といえます」(前出・岡本さん)
必ず世界中から注目をあびる五輪が東京で開催される2020年までに、日本の観光はアニメに限らずコンテンツを中心とした質的な変化を遂げることになりそうだ。