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2014.05.11 15:59 週刊ポスト
制作費削減でAVマンネリ化 手作り感満載の素人動画が人気
撮影も自分、出演も自分、販売も自分。これまで愛好者の間で密かに制作され、視聴されていた“同人AV”が昨今、アダルト業界に新風を吹きこんでいる。所詮素人だと侮るなかれ。マンネリ化したプロの作品にはない、生身のリアルなエロスがそこにはあった。
窓ごしに見える煌びやかなネオンを背景に、男女が全裸で抱き合っている。ホテルの高層階だろうか。ただし、セレブ感のあるシチュエーションとは対照的に、男女は40代半ばの、どこにでもいるような中年カップルだった。男の下腹はたるみ、一方の女は二の腕や下肢が少しだらしない。
やがて女は屈んで、男の股間に顔をうずめ、反り返ったペニスを口にふくんだ。画面は何やら薄暗い。そして画質は荒い。モザイクはわずかにかけられ、局部周辺は不鮮明だ。くちゃ、くちゃ。女が男の秘所を愛撫する音だけははっきりと聞こえる―。ネットやレンタルショップで流通するエロ動画やアダルトDVDとは何かが決定的に異なる。それは画面から匂い立つ、淫靡な生々しさだ。
実はこれ、「同人AV」と呼ばれる新ジャンルの作品なのである。同人AVとは文芸や漫画でいう同人誌のように、AV愛好者が自らの手で制作し、大手流通網には乗せず、愛好者らの間で売買する作品のことだ。
物語や演出は手作り感満載だ。出演する女性にしても貧乳だったり、段々腹が目立ったり。撮影も拙く、肝心のシーンがピンぼけしている時もある。が、だからこそ臨場感が妙に欲情をそそるから不思議なものである。なかにはAV業界の人間を思わずうならせる作品も数多い。
わざとらしい演技もなければ、決まりきったカメラワークもない。こうした同人AVが支持される背景には、粗製濫造が進むAV業界への不満が読み取れる。AV評論家の大坪ケムタ氏はこう語る。
「同人AVが人気を博すのは、本流のAV業界が低迷しているからです。ネットで簡単に無料動画が視聴できる昨今、業界の売り上げは毎年減っている。そのあおりを食って人件費や制作費が削減された。昔は3日ぐらいと余裕をもって撮影してきた作品が、1日で終わらせるように指示される。こだわった画作りをするような余裕はない。残念ながらAV業界はマンネリ化の時代に入ってしまいました」
一方でそうした風潮に満足できなくなったAV愛好者が、自らカメラを持つようになったというわけだ。
※週刊ポスト2014年5月23日号