中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチなどで今年に入って自爆テロが相次いで発生するなど、自治区の主力産業である観光業への影響が懸念されるなか、自治区政府は中国人観光客の旅行中の安全確保はもちろんのこと、全員にもれなく500元(約9000円)を提供するとの方針を決定した。
しかし、ネット上では「500元で命を買うの? この命はなんて安いのだろう!」などと自治区政府の対応を皮肉る書き込みがなされている。米国を拠点とする中国情報専門の華字ウェブサイト「多維新聞網」が報じた。
中国では昨年10月、首都・北京の中心部、天安門で自動車による自爆テロが発生し、40人超が死傷したのを皮切りに、11月と12月にそれぞれ同自治区カシュガルで、ウイグル族住民が派出所を衝撃。3月1日には雲南省昆明市の昆明駅で刃物をもった男女数人が居合わせた住民らを殺傷し、29人が死亡し140人以上が負傷。4月30日と5月22日にいずれもウルムチで起きた爆弾テロで多数の死傷者が出ている。
この影響で、自治区への観光客が激減。昨年の自治区の観光収入は前年比13%増で、観光客は過去最高の5000万人を突破したものの、今年の1月~5月までの観光客数は前年同期比で約40%減と急激に落ち込んでいる。このままでいくと、今年は1年間で半減どころか、今後はほとんど観光客が訪れないという事態も想定される。
そこで、自治区政府は中国人観光客にそれぞれ500元の奨励金を出すという対策を決め、その原資として、2000万元の特別予算を準備した。また、中国政府は今後1年間、テロ対策を継続していくとの方針を打ち出したものの、他の省・自治区など地方政府に対して、新疆ウイグル自治区への観光を奨励するよう通達を出すなど、「新疆支援」を強めることにしている。
このような自治区への観光振興策について、ネット上では「必ずテロ分子に打撃を与えなければならない。草の根分けてのテロ分子を壊滅させよ」(中国系「鳳凰ネット」)といった勇ましいものもあるが、多維新聞網では「500元?死亡の旅?」「500元の命か。なんと安い命だこと!」といった書き込みが見られる。