安倍のヴェトナム訪問後、ODAの枠組みを使った「巡視船の供与」が俎上に載ったが、まだ計画段階にあり実際には1隻も供与されていない。安倍の訪問から1年以上、具体的な関係強化は何も進んでいなかったのである。
結局、安倍がこの一件で強く出られないのは中国の反発を恐れているのに加えて、アメリカの顔色をうかがっているからだ。南シナ海での対立についてオバマは「領有権問題には関わらない」との姿勢を貫いているから、ヴェトナムに全面的に肩入れできないわけである。
最終的にアメリカの意向に従うだけなのであれば、国民に増税で負担を強いている中で安倍がわざわざ外国を飛び回る意味などないだろう。しかも4月末のオバマ来日の際に明らかになったように、安倍はアメリカからも信頼されていない。
共同会見で安倍がオバマに何度も「バラク」とファーストネームで呼びかけたにもかかわらず、オバマは「プライム・ミニスター」と、ことさらに他人行儀な態度を続けたのが象徴的だった。会談中に相手がどういった態度だったかを観察・分析する力がないからそうしたみっともない齟齬が起きる。世界を飛び回って各国で首脳会談を重ねた結果がこれでは残念と言うほかない。
※SAPIO2014年7月号