長谷川:規制改革会議が答申案をまとめるまでに、農協にせよ、混合診療にせよ、水面下で自民党や各省庁と協議をし、かなり激しいバトルをしてきました。“水面下”というと、役人にうまくやられてしまうと思われがちですが、実態は違う。
政権発足直前のことですが、農水族の一人が総理に「本当に農業改革に手を付けると農協が黙っていない」と直談判しにきた。でも、総理は「農協が自民党を支持しないというなら、どうぞと言え」と突っぱねたんです。つまり安倍首相は最初から本気だった。野党が壊滅状態で、これまで長老とよばれてきたような政治家は退場しました。
安倍政権は次の内閣改造で抜擢をちらつかせることで、族議員もしっかりと取り込んでいる。向かうところ敵ばかりだった小泉政権が議論を公開し、世論を味方にしながら、抵抗勢力を潰そうとしたのとは対照的な手法です。
原:ただ、今後の規制改革に不安がないわけではありません。ペースがあまりに遅い。安倍首相は今年1月のダボス会議で、2年以内に岩盤規制をすべて突破すると明言しましたが、半年経っても改革が完了したものはひとつもない。
長谷川:成長戦略といっても、まだ「口だけの宣言」だからね。法律でどこまでやり切れるかが本当の通信簿になる。すべては来年の通常国会ですが、そこまでにどこまで盛り込めるか。農業でいえば、当面は答申に全農の株式会社化という文言も入ったし、企業の参入規制のハードルも下げた。でも、結局は改革法案がどう出来上がるかというのが規制改革の要です。
原:法案ができるまでには、霞が関、永田町の反撃が予想されます。官邸主導の政策づくりに対する「けしからん」というマグマは日増しに強まっています。
※SAPIO2014年8月号