サムスンの場合も、経営幹部たちの大半は李健熙氏だから従ってきたのであり、息子や娘に対する忠誠心は高くない。年間5億~10億円の高給を得てきた彼らは、中国やインドなどの新興国でゼロから事業を立ち上げた実績と能力を持ち、語学力もあるので世界中の企業から引く手あまたである。
李在鎔氏らが後を継いだ時は、続々と離反していくか、彼らが結束して一族支配に抵抗する可能性もある。構造的には堤義明氏の国土計画(コクド)が支配していた西武鉄道グループと似ていて、実際には支配権が及ばなかったり、きょうだい仲が悪く訴訟合戦になったりする可能性も予見される。
さらに、グループ全体では業績不振に陥る企業が増加し、2013年に韓国の上場企業の純利益の半分を占めた稼ぎ頭のサムスン電子も「次の収益源」が見つかっていない。
サムスン電子は、10年以上にわたり急成長を続けてきた。しかし、世界市場で日本勢を駆逐してきたテレビなどの家電事業は、今やサムスン電子といえども収益を出していない。冷蔵庫や洗濯機などの白物家電ではスウェーデンのエレクトロラックス、中国のハイアール、韓国のLGなどが先行している。
最大の収益源である半導体とスマートフォンの二本柱のうち、今後100ドル前後への低価格化が進むとみられるスマホについては、現在のサムスン電子のコスト構造では対抗が難しい。すると残る収益源は半導体だけになってしまう。スマホに匹敵する新たな収益源を見つけない限り、これまでのような成長を持続することはできないだろう。
※SAPIO2014年8月号