一方でPAPによる管理を徹底しているはずのMLBで、肘の腱の再建手術である「トミー・ジョン手術」を受ける選手が急増している現状がある。しかも長年の勤続疲労のあるベテランではなく、若手で手術に踏み切る選手があとを絶たないのだ。
昨季のオールスターで先発したマット・ハービー(メッツ・25)をはじめ、昨季ナ・リーグ新人王のホセ・フェルナンデス(マーリンズ・21)、さらには昨季12勝を挙げ、今季の開幕投手に指名されていたジャロッド・パーカー(アスレチックス・25)は2度目の手術を決断するなど、今季だけで20人近くの投手が手術を受ける異常事態(昨季は23人)。このペースでいけば、数年のうちにMLBに在籍する全投手の3分の1近くが手術経験者になる可能性があるといわれている。
中6日の日本球界でトミー・ジョン手術を受ける投手は少ない。今年でいえば、釜田佳直(楽天)、森内壽春(日本ハム)、ブライアン・ウルフ(ソフトバンク)の3人。この違いは、肘の故障の原因がMLBの中4日システムにあることを疑わせる。
悪いのは「中4日、100球」か、「中6日、140球」か──。この論争は日米で見解が真っ二つに分かれている。
スポーツ医学の面でも明確な答えは出ていない。日本整形外科学会認定スポーツ医で京都警察病院の古川泰三診療部長が語る。
「野球による肘の痛みは投げすぎが最大の原因であることは間違いありません。未熟なフォームで投げすぎることで、幼少時は軟骨障害、成人してからは靱帯損傷を起こしやすくなる。
ただ、中4日の100球と、中6日の140球のどちらが肘にいいかは一概にはいえません。もちろん個人差があるし、投手の感覚的にも違いがあります。医学的にも、両者にはっきりとした違いはありません」
※週刊ポスト2014年8月8日号