ビジネス

シャープ・お茶プレッソ石臼や茶筅に学び細やかな泡立ち実現

 現在大ヒット中のシャープ「ヘルシオお茶プレッソ」誕生の舞台裏はいかなるものか──作家の山下柚実氏が取材した。
 
 * * *
 目の前に不思議な形をした装置が置かれた。一見するとコーヒーメーカーに似ている。しかし、途中から「竹」の素材でできたパーツと合体している。何とも奇妙な姿。
 
「社内も取材の方も、まだ見た人は少ないはずです」とシャープ調理システム事業部の田村友樹氏(49)は言う。実はこれ、今大人気の「へルシオお茶プレッソ」の出発点となった、試作機だ。

 2014年4月、シャープが発売した「ヘルシオお茶プレッソ」は、市販の茶葉を挽き粉状にして本格的な茶を点てるという世界初の「お茶メーカー」。話題は沸騰し、消費者だけでなく茶葉生産者や販売者の関心も一手に集めて予約殺到。当初の生産計画を5倍の月2万台に引き上げて増産している最中だ。

「茶道をお手本に、石臼や茶筅という伝統的な道具に学びながら、機能を写し取っていきました」と田村氏。そのユニークな開発プロセスを、試作機が雄弁に物語っている。

 これまで薄型テレビ等のデジタル家電が牽引してきた家電市場。しかし2012年、逆転現象が起こった。冷蔵庫や洗濯機といった白物家電の出荷額が、デジタル家電を抜き去ったのだ。白物の国内出荷額は2兆4千億円超、今では利益の半分以上を稼ぎ出す存在に。同時に高級化・高付加価値化も進み、外国家電も流入してくる激戦区へと様変わりした。そんな市場で久々に日の丸家電の底力を見せた「ヘルシオお茶プレッソ」。誕生の秘密に迫った。

「まず、従来の石臼の構造から学びました。茶葉を挽く石臼は回転速度が遅いので摩擦熱が抑えられ栄養分を壊さない利点があります。が、時間がかかる。まろやかな口当たりにするために20ミクロンまで細かくしなければならない。結局、上の臼と下の臼の接触面にどのような模様を刻むかがポイントでした」

 臼の表面の溝の深さや線の間隔、角度などの模様によって、粒子の細やかさや挽く時間が変化していくことがわかった。試作しては修正し、30個ほど試行錯誤。2分で1人分が挽けるセラミック製臼が完成したのは、何と発表1か月前。もう一つ壁があった。粉と湯を混ぜる技術だ。

「マドラーやミキサーなどを改良してみましたが、泡が大きすぎたり粒子が混ざらなかったり。失敗続きでした」

 結局田村氏が立ち戻ったのは、伝統的な竹の茶筅だった。

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン