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荒川博氏 「打撃の神様と呼ばれた川上さんに王の指導は無理」

 王貞治を世界の本塁打王に育てた荒川博氏(84)は1961年に現役を引退した翌年、31歳の若さで巨人打撃コーチに就任した。毎日オリオンズ(現・ロッテ)での現役時代に榎本喜八(通算2314安打、首位打者2回)を育てた実績から、巨人コーチとして荒川に期待されたのは王貞治を育てることだった。入団3年間でホームランが7本、17本、13本。通算打率は2割4分、三振は245個だった王に出会ったころの思い出を、荒川氏が語った。

 * * *
 これ(王)を榎本のような打者に育ててくれという。しかも本塁打は25本以上打たせろと要求が高かった。当時の巨人の本塁打記録は中島治康さんの31本。この時は「大変な仕事を引き受けてしまった」と思いましたよ。

 ただね、王の指導は打撃の神様と呼ばれた川上(哲治)さんには無理だったんです。

 熱心に教えるんだが、なにせ“打撃の神様”だから自分のバッティングを押し付けてしまう。王の前にも坂崎一彦(浪商)をぶっ壊してしまっていたしね。

 そもそもバッティングは人によって違います。体も違えば性格も違うわけで、まずはこれを把握し、目的に応じて指導しなくてはなりません。

 例えば榎本は典型的な中距離打者タイプでした。彼は川上さんと同じアッパースイングだった。それもバットを振るとヒザに土がつくほどのスイングです。

 そういう打ち方は、ボールがストライクゾーンに入ってくるまで引きつけられるから「ボールが止まって見えた」のでしょう。でも、その打ち方ではヒットは打ててもホームランにはならない。ボールにドライブ回転がかかって、ライナーになってしまいますから。

 ホームランを打つにはダウンスイングが必要。日本刀を振れば分かるが、上から下に振り下ろさないと刀に力は伝わらず、相手は斬れない。バットも同じです。それで王に真剣を持たせ、上から振って紙を切らせる練習をさせたのです。

 当時、青田昇さん(巨人ОB)なんかは「上から打ったら球が下に潜らァ」なんてバカにしていた。でもダウンスイングでないと王は800本もホームランを打てなかったし、王がいなければプロ野球は今のように盛んにならなかったと思う。僕の指導が新しい時代を開いたのだと自負していますよ。

※週刊ポスト2014年10月3日号

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