拉致は北朝鮮による国家犯罪であり、金正日という最高権力者の命令で、国家機関がミッションとして日本人を拉致した。目的は工作員の教育係や、よど号乗っ取り犯の花嫁候補などにするためだった。そのため、拉致被害者は現地で当局の厳重な監視下に置かれ、行動を制約されている。そのことは帰国した5人の証言からも明らかだ。
つまり、北朝鮮は「拉致被害者の安否」など、改めて“調査”するまでもなく、最初から把握している。
安倍首相自身、自民党幹事長時代、「拉致をしたのは彼らで、行方を知っている。知らないふりをして一緒に調査するというのは、時間延ばし以外の何物でもない。拉致問題は金総書記がすべてを話せば一秒で解決する話だ」(日本経済新聞、2004年5月22日付)と、正しく認識していたではないか。
それを承知でなお、安倍首相が北朝鮮のいうままに「特別調査委員会」設置という茶番に乗り、再調査に国民の期待を ったのは、「拉致被害者2~3人を帰国させる用意がある」という北の甘言に乗せられ、功名心に逸(はや)ったからだ。自らの言にあてはめれば、「時間延ばし」に協力したということになる。
※週刊ポスト2014年10月10日号