来る2015年、中国の大巨匠が韓国の人気俳優を起用した中韓合作映画をプロデュースするという。
巨匠とは、『紅いコーリャン』(1987)『初恋のきた道』(1999)などで海外映画祭の栄冠に輝き、北京五輪の開会式の総合演出を務めたチャン・イーモウ氏(62)だ。チャン氏のもとで、メガホンを執るトミー・ファン氏は香港で実力派監督として知られる。
一方の韓国俳優は、韓流ドラマ『天国の階段』への出演で知られるクォン・サンウ氏(38)だ。日本の韓流ファンの間でもカリスマ的人気を誇る。
映画通ならずとも心躍らせずにはいられない陣容だが、その題材を聞けば日本人として心中穏やかではない。
“反日義士”安重根の生涯。
本格的な撮影はスタートしていないというが、題名は『撃斃 撃斃』だという。中国語で「撃ち殺す」の意。
初代韓国統監の伊藤博文を暗殺して民族活動に殉じた安が、ヒロイズム満載に演出されることは、十分に予想される。
安といえば「抗日」という共通体験を持つ中韓にとって最大のアイコンだ。
彼を主人公に据えた映画が終戦70年の節目に中韓合作で企図されている──そこに政治的意図を読み取るのは難しくはない。
※SAPIO2014年12月号