そして、さる11月4日、最高裁は総連の不服申し立てを棄却し、マルナカHDへの本部ビル売却が確定した。

 これが額面通りに受け取れないことは、これまで総連に不利な司法決定が出るたび日本に強く抗議してきた北朝鮮が今回は沈黙していることからも読み取れる。日本政府関係者の話だ。

「マルナカはすでに落札代金を裁判所に納付しており、月内にも所有権移転手続きが完了する。それでも北朝鮮本国や総連が静観しているのは、売却後も総連が本部ビルを継続使用できるスキームがすでに整っているからに他ならない」

 この政府関係者によれば、そのスキームとはこうだ。総連からビルを取得したマルナカHDは他の不動産会社Xにビルを転売する。しかし、そのX社は間もなく、さらに他のY社に売却する。そのY社というのが、実は総連に関連する会社であり、そこが総連に賃貸契約で貸し出す。そうすれば、総連はビルから退去する必要はなくなる──というものだ。

「『三角取引』のスキームは10月末までにできあがった。最終的には外務省を通じ、日朝の政府間で了解を得たと聞いている」(同前)

 最高裁決定直前の11月2日に外務省の伊原純一・アジア大洋州局長と北朝鮮政府関係者との中国での極秘会談が行なわれたが、その内容はこのスキームの報告ではなかったのか。そう考えると、北朝鮮がこの間、総連ビル問題について何も発言してこなかったことも合点がいく。

※週刊ポスト2014年12月5日号

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