山口県美祢市にある美祢社会復帰促進センター。日本初の官民協働刑務所であるこのセンターで行われる更生指導は独特だ。「絆プログラム」という改善指導では、子を持つ受刑者が絵本の音読をしてその音声をCDに録音。子供の元へと届ける。「お母さんはあなたのことを忘れていない」というメッセージを子供に伝えることで、親子関係の修復につなげる目的があるという。
収容されて1年になる44才のA子さんは覚せい剤の初犯で服役中。更生指導で人生観が変わったと話す。
「10~25才までの子供が4人います。シングルマザーなので、子供を育てるために無理して仕事をかけもちして、しんどかった。子供に心配かけたらあかん、とひとりで抱え込んでクスリに手を出してしまって…」
成人した子供は覚せい剤のことを知り激怒したが、小学生と高校生の子供には本当の罪名を伝えていない。出所後も真実を明かす予定はないという。
「ここに来て、薬物に対して知識がないままに使っていたことを実感しました。そして『心のトレーニング』を受けて世の中にはいろいろな考え方があることもわかった。今まではひとりで抱え込んでいたけどこれからは周りの意見も聞いて人にうまく頼れる気がします」(A代さん)
最新のセキュリティー、練りに練られたカリキュラムなど「美祢ほど環境が整っている施設はない」といわれるが、他の刑務所同様に問題はある。若手の女性刑務官が話す。
「もめ事が多く、その原因は『クチャクチャ音を立てて食べるのが気に入らない』とか、『コップに注ぐお茶の量が多いから次の人が少なくなる』というような些細なことも多い。注意しても年上の受刑者からは“こんな小娘に”という目でみられることもあります。職員によって態度を変える者もいる。毅然と立ち向かう姿勢が必要です」
“かつてない新しい刑事施設”として誕生して7年。先進的な設備と教育内容を生かしたさらなる変革が求められている。
※女性セブン2014年12月4日号