マナー向上や自主規制が進む中で、経済的な損失も見込まれる“強権発動”をすることが本当に得策なのか。委員のひとり、獨協医科大学付属病院の放射線科医師である名取春彦氏はこんな持論を展開した。
「受動喫煙問題は喫煙者の自覚を促すことがもっとも重要。どんなに完全分煙化にしても、(例えば、グループで食事に行ったときなどに)同じグループの中で喫煙者の比率が高かったら喫煙スペースに行くでしょう」
自覚がなければ喫煙マナーは生まれず、上からの強制は反発を招くだけで自覚にはつながらない――名取氏はこう訴えているのである。
一方、必ずしも喫煙者ばかりが悪いわけではないとの認識を持つ委員もいる。順天堂大学大学院医学研究科(アトピー疾患研究所所長)の奥村康氏は当サイトの取材にこう答える。
「そもそも、がんになる要因や副流煙の被害をたばこのせいだけにするのは因果関係が乏しすぎますし、私の専門である免疫学の観点から見ても、喫煙者の免疫力が下がるなんてデータはなく、むしろ上がることが分かっています。
検討会がどういう方向になるにせよ、お金をかけてヒステリックに“たばこ狩り”をするくらいなら、他にやるべきことはたくさんあると思います」
検討会は来年3月をめどに意見集約をする予定。現場の声に耳を傾け、“東京独自の対策”を形づくるヒントになるような議論を期待したい。