たかの友梨ビューティクリニックでのマタハラ問題が発覚してから、その“ブラック”実態が明らかになりつつあるエステ業界。厳しい労働環境と重いノルマは、強引な勧誘という形で客にしわ寄せが行っている。
こういった状況に陥っている背景には、エステ業界の厳しい現状がある。エステサロン、ルメートルセラピー代表取締役で『“ぼったくり”悪徳エステサロン20の手口』の著者・中島伸一さんがその裏事情を説明する。
「エステ業界はワンマン経営者が多く、もともと一般企業とは違った雰囲気があるんです。かつては業界全体の景気がよく、経営者の年商が数百億円という時代もありました。従業員の給料もよかったので、これまでにもあった“ブラックな面”が表に出にくかった。しかし、業界内の競争が激しくなり景気もよくない状態が続くなかで各社とも経営が厳しくなっている。結果、従業員の待遇が悪くなり、ノルマもきつくなったため、さまざまな問題が噴出してしまったのだと思います」
確かにエステ業界の“価格破壊”は著しい。かつては入会金だけで100万円、コースを組めば数百万円もする時代があったが、最近では「脱毛500円」、「体験1000円」といった格安広告が目立つ。そこにはこんなカラクリがある。エステ業界の就業環境改善に取り組む「エステ・ユニオン」の青木耕太郎さんは言う。
「今は価格を安くしなければお客さんがつかない。でも、安くすれば利益が出ないので、安いコースを“エサ”にして客を誘い、そこにいろいろなコースを追加させて売り上げを上げている。高額な化粧品などを買わせるのも、エステサロンの戦略の1つです」
元エステティシャンのMさんもこう打ち明ける。
「例えば脱毛コースのお客様には、1本2万円くらいする保湿用のローションを売りつけていました。市販の1000円のものと中身は変わりませんが、『やはり専用のものでないと効果に差が出ます』とおすすめするんです。フェイシャルコース以外のお客様に『お試しサービス』ということで美顔マッサージなどを施し、マシーンを売りつけることもありましたね。1台5万円ですが、原価は3000円でした」
もちろん、こうした悪質な事例は業界の一部にすぎず、すべてのエステサロンで行われているわけではない。
従業員は厳しいノルマに苦しみ、それゆえ客は高額契約を結ばせられる──美しくなりたい、という女性の願いが業者の算盤勘定で利用されるなど、絶対にあってはならない。
※女性セブン2015年1月8・15日号