5年ほどまえからMac向けやiPhone用アプリをつくってきた安原啓悦さんが2013年4月にリリースしたiPad用アプリ『my家系図』は、iOSらしく直感的な操作で家系図が作成できるアプリだ。これまでカレンダーなどのユーティリティやゲームアプリをつくってきた安原さんは、iPadの大きな画面を生かしたアプリを作りたいと考えていたとき、約10年前に大変な苦労をしてパワーポイントで家系図を作成した自分の体験を思い出した。
「父が亡くなって葬儀に親戚が集まったとき、家系の話題になりました。ちょうど戸籍謄本などの資料も集まっていたので、パワーポイントで丸を描いて家系図をつくったのですが、とても苦労したんです。iPadの大きな画面を生かすアプリとして、そのときの苦労が蘇りました。ゲームアプリだと、一時的にダウンロード数が増えたあと少なくなってしまうのですが、『my家系図』はずっとコンスタントにダウンロードされています」
息長く使われているアプリにふさわしく、『my家系図』はアプリストア日本版のライフスタイル無料カテゴリ部門で最高11位になった。PDF出力に対応し、前出の『つくれる家系図』と同様に印刷に対応して、大勢で共有できるようになっている。家系図はやはり、つくったら親戚と共有するものなのだ。ところが『my家系図』の場合は、安原さんのもとには意外なリクエストや使い方が届いた。
「簡単につくれる、楽しいという感想を多くいただいています。その後、親子関係、婚姻関係だけを想定していたのですが、再婚や養子もあらわしたいという要望に合わせて補助線で結ぶ機能追加をしました。ユーザー自身の家族の家系図をつくることしか考えていなかったのですが、歴史上の人物や『サザエさん』で作りましたと言われて驚きました。試しに私も作ってみて、イクラちゃんとタラちゃんが”はとこ”だと初めて気づきました(笑)」
アプリストアで「家系図」と検索すると、日本語対応したものだけでも数多くのアプリが並ぶ。その使い道をユーザーに尋ねると、ゲームや小説、アニメなどの登場人物、戦国武将の込み入った姻戚関係を整理するためや、競走馬の血統を記録している人もいる。以前は、家系図といえば何万円もかけて作成するのが常識だった。しかしソフトウェアやアプリによってカジュアルな存在になってきたようだ。