「中国語教育の普及」を建前に中国政府が日本を始め、世界に展開する「孔子学院」は、政府のプロパガンダ機関と化しているとの批判が根強い。在米ジャーナリストの高濱賛氏がレポートする。
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2014年12月、米下院外交委員会の小委員会で「米大学の『学問の自由』は中国に脅かされていないか」と題する公聴会が開かれた。
標的となったのは中国政府が資金や人材を提供し世界中で中国語・中国文化講座を運営する「孔子学院」。米国では2004年、メリーランド大学に開設されたのを皮切りに2014年末現在、コロンビア、スタンフォード、ミシガンなど99大学に設置されている。
公聴会では元北京大学教授の夏業良・ケイトー研究所客員研究員が孔子学院の予算や人員などの最新状況を明らかにした。ウェズリー大学のトーマス・クッシュマン教授は、
「孔子学院は明らかに中国の国際的なイメージ改善を目的とした『ソフトパワー』だ。提携大学の米人教授の多くは、チベット、ダライ・ラマ、台湾、人権、法輪功など中国政府が嫌がるテーマを授業では一切触れないよう要請され、自己規制してきたと認めている」
と証言した。「孔子学院」に対する疑惑は数年前からいくつもあった。
2008年、中国の民主化を求めた「零八憲章」署名運動の推進者である夏業良氏の北京大学教授解任を指示したのが孔子学院本部のトップ、劉延東氏(中国情報機関「党中央統一戦線工作部」元部長で現副首相)だったこともあり、全米大学教授協会(AAUP)始め学界ではおのずとその実態に目が向けられていった。
2014年6月、AAUPは「孔子学院の運営には中国政府の意向が強く反映されており、このまま続けることは『学問の自由』を脅かしかねない。運営上の権限を大学側に移譲しない限り、すべての大学は孔子学院との関係を絶つべきだ」との声明に踏み切った。
これを受け、2010年から孔子学院と提携してきたシカゴ大学教授会は9月26日、契約打ち切りを決めた。10月1日にはペンシルベニア州立大学も年内に提携契約を打ち切ると発表。契約更新拒否の動きはカナダやスウェーデンの大学にも広がっている。
立命館大や早稲田大など20か所にある日本の孔子学院についても議論すべき時期かもしれない。
※SAPIO2015年3月号