最盛期には日本中のあちらこちらに存在した秘宝館だが、昨年末をもって鬼怒川秘宝館(栃木県)が33年の歴史に幕を下ろし、残るは熱海1館のみ。写真家の都築響一氏が改めて秘宝館の素晴らしさについて語る。
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僕が秘宝館と出会ったのは雑誌の連載がきっかけでした。秘宝館の全盛期はとうに過ぎ、ほとんど見向きもされない、いわば「終わりの始まり」だった時期です。
助平なおっさんのためではなく、みんなが楽しめる観光スポットとして不思議な価値があり、プロのアーティストの作品に負けない面白みも持っている。だけど、アート界だけでなく教育界や地元の人からまったく無視されていた。これは衝撃でしたね。情報がないから自分で取材するしかなかったんです。
そこから秘宝館の展示物のインスタレーション・アートとしての魅力に取り憑かれて、2000年に閉館した鳥羽のSF未来館の人形も、ベンツ1台分くらいの金額を投じて買い取りました。
秘宝館の展示物は、民俗資料や文化遺産だと思うんです。だから、民俗博物館や資料館なりに納めて、みんなが見れるようになるといいなって気持ちだった。でも、エロいものには誰も手をあげてくれず、仕方なく倉庫を借りて……、維持費もめちゃんこかかってますよ。まさかこんなことになるとは(笑い)。
日本の秘宝館は学術的な展示が主な外国とは違い、あくまでもみんなに楽しんでもらおうという独自のエンターテインメント。「日本の大衆文化の象徴」だとは理解されていない。僕はコレクターじゃないので、早く然るべきところで展示されて、皆さんに見てもらえる日がくるのを願うのみですね。
それから、今になって秘宝館の閉館が騒がれていますが、みんなが行ってれば閉まることもなかった。終わらないと話題にならないのは皮肉なものだなあと。無くなってから惜しがるのは簡単だけど、行くのはもっと簡単。熱海だけになってしまいましたが、今こそ秘宝館に行きましょう!
※週刊ポスト2015年2月20日号