スポーツ

関学~初角界入り宇良和輝 アクロバット相撲への期待と課題

 3月場所は学校を卒業した学生が多く入門するために「就職場所」と呼ばれるが、今回の就職者の中で最も注目されているのが、木瀬部屋に入門する宇良和輝(うら・かずき)だ。関西学院大相撲部創部125年で初のプロ入りとなる逸材だが、奇手が武器という変わり種である。

 テレビのバラエティ番組で、学生相撲大会での「足取り」や「居反(いぞ)り」といったアクロバティックな取り口が取り上げられ注目度がアップ。小3~中3までやっていたレスリングの経験を活かしたもので、「技のデパート」といわれた舞の海の再来と期待されている。

 宇良は172センチ、107キロ。中学卒業時には147センチしかなく相撲を諦めかけたが、相撲部のある鳥羽高(京都)へ進学したことで続行を決意した。大学進学後は体重を増やすことに専念。1日に米5.5合、卵5個をノルマに食べまくり、たった半年で体重を100キロ台に乗せたが、身長だけは如何ともできなかった。

 そこで小柄な体格、レスリングの経験を活かし、相手の懐に飛び込む予想外の動きで主導権を握る取り口を研究した。その結果、相手の下に潜り込んで膝をみ、そのまま腰をのけぞるようにして相手を倒す「居反り」などの大技を身につけたのである。レスリングの「飛行機投げ」を応用したのだという。居反りは幻の技といわれ、大相撲でも1993年に智ノ花が決めて以来、20年間も出ていない。

 ソウル五輪レスリング金メダリストで、国際武道大学レスリング部監督の小林孝至氏も期待を寄せる。

「レスリングと相撲は非常に親和性が高いんです。レスリングの選手は相撲の基礎を勉強して腕の返し方などを学び、それを応用して技を磨いていく。レスリングの技には相撲の決まり手と似たものが多い。考え方が柔軟であれば面白い存在になると思います」

 もちろん課題もある。

「レスリングは相手の下に潜り込んで足を取るタックルに練習の大半を費やす。相手の体重が重い相撲で、それがどこまで通用するか。日本人には有効かもしれませんが、レスリングに精通するモンゴル人にはタックルを上から潰される恐れがある」(小林氏)

 また、前相撲から番付を上げなくてはならないことも大きなハードルだ。

「前相撲は一挙に昇進ができず、一つ一つ番付を上げていかなくてはならないので、順調に出世しても関取になるまで2年はかかる。その間の稽古は厳しいし、付け人としての仕事も大変。だから最近の角界を目指す若者は、学生横綱などになって幕下付け出しで入門したがるんです。前相撲からだと挫折する力士も少なくない」(協会関係者)

 入門会見で宇良は「1年目は体重を10キロ増やし、2年で関取が目標」と答えた。春場所で大技は決まるか。

※週刊ポスト2015年3月13日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン