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テロリストに親日も反日もない 日本人への脅迫は欧米と同じ

 日本および日本人の針路を考えるためには、まず、正確な現状認識が必要となる。自称「イスラム国」によって引き起こされた事件で、我々をとりまく状況はどのように変化したのか。中東情勢に詳しい山内昌之・明治大学特任教授が解説する。

 * * *
 中東の国々やアラブの人びとは親日的だとよく言われる。これは一般的に言えば決して間違っていない。しかし、今回の「イスラーム国」(IS)や以前のアルジェリアで起きた日本人殺害事件(*注)に接すると、中東やアラブの側の日本を見る目が変化したと主張するような論説が決まって現れる。

【*注/2013年1月にアフリカ・アルジェリアで発生した、武装イスラム組織による外国人襲撃・殺害事件。日本人の化学プラント技術者ら10名が犠牲となった】

 中東の一般市民や世論のなかにある日本への好感度と、イスラーム・テロリズムによる日本人殺害予告に見られる“日本への敵対”や“日本人脅迫”の違いを区別せずに、あたかも中東の空気ががらっと変わったかのように論を立てるのは間違いである。

 ISのようなテロリズムの論理は、日本や日本人を含めて世界の誰でもターゲットにする。テロリストに親日も反日もない。あるのは、かれらの目標とする戦略や実現の戦術にとって、拉致誘拐による人質から身代金を取るか殺害するか、いずれが有益かを判断するプラグマチックな論理だけである。

 テロリストになっても日本人を好きだとか、日本を信頼するテロ組織というものが果たして存在するのだろうか。テロによる日本人への脅迫は、アメリカ人やフランス人といった欧米人が受ける危険と変わらないのだ。

 むしろ、ISやアルカーイダのようなイスラーム・テロリズム組織の脅迫や犠牲を日々いちばん受けているのは、ほかならぬ中東に住むアラブ人などのムスリム住民なのである。内戦や戦争に苦しむシリアやイラクの難民はもとより、かれらを受け入れるヨルダンの国民と国も日常的にテロと暴力の脅威から無縁でないことは言うまでもない。

 かれらに人道支援をするのはまことに当然であり、安倍晋三首相がその増額を明確に言明するのは、アラブの友であり中東の友邦たる日本にとって自然の振る舞いなのである。これをもって、ISの後藤健二さんら人質を処刑する口実になったと主張するのは、日本に水・食物の補給や児童医療など難民人道支援から手を引けと論じるのに等しいのではないか。ひいては、ISによる攻撃リストから日本を外してもらおうという卑怯な考えにもつながる。

※SAPIO2015年4月号

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