国内

オフレコ扱いにされた黒田日銀総裁の「日本国債」深刻発言

 日経平均株価が高騰し、大メディアが「今世紀最高値」(産経新聞)とお祭り騒ぎする中、NHKが『ニュースウォッチ9』で報じた「預金封鎖 もうひとつのねらい」という特集(2月16日放送)が大きな反響を呼んでいる。終戦直後の1946年、政府が戦時中の借金を返すため、全国民の預金を封鎖したうえでそれに課税し、資産を根こそぎ没収した歴史的事実を検証した内容だ。

 わずか8分程度の特集だったが「預金封鎖」のワードは瞬く間に世間の“流行語”となった。奇妙なのは政府が経済の好循環をアピールしたいこの時期になぜ「安倍ヨイショ」のNHKが敗戦直後の経済混乱下で行なわれた非常措置を取り上げたのかだ。

 こんな伏線があった。実は放送4日前、安倍政権の経済・財政政策の基本方針を決める「経済財政諮問会議」の席上で、黒田東彦・日銀総裁が重大な発言をしていた。

 会議のテーマは財政健全化だった。いつもは聞き役に撤する黒田氏が自ら発言を求め、深刻な面持ちで国債の危機に触れたのである。会議には安倍首相や麻生太郎・副総理、榊原定征・経団連会長らの他、関係各省の副大臣、官僚ら30人以上が出席しており、黒田発言は自民党政務調査会や税制調査会の幹部たちにも伝えられたが議事録には載らない「オフレコ発言」とされた。自民党政調幹部が語る。

「黒田総裁は昨年12月に日本国債の格付けが引き下げられた影響を非常に心配していたようだ。これまで銀行が保有する国債はリスクゼロ資産とされていた。

 しかし、スイスに本部を置くバーゼル銀行監督委員会では、国債をリスク資産と見なし、格付けに応じて査定するように銀行の審査基準を変更する議論が始まったという。黒田さんはそのことを詳細に説明したうえで、“基準が見直されれば大量の国債を保有する日本の金融機関の経営が悪化し、国債が売れなくなって金利急騰につながりかねない”と指摘した」

 金融政策の責任者である黒田総裁が首相の前で“日本国債はもうダメかもしれない”と弱音を漏らしたのだから、この黒田発言が「オフレコ」となったのも当然である。

※週刊ポスト2015年3月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン