週刊ポスト3月13日号が報じた〈「コレステロール値250mg/dl」は健康体だった〉という記事は大反響を呼んだ。健康のバロメーターとして根付いているコレステロール値が根拠も曖昧なまま厳しく設定され、それによって“病人”が増やされていること、最新研究では総コレステロール250mg/dlまで健康体とされることを報じた同記事により、かつての“常識”は揺らいでいる。
コレステロールを巡るおかしな“常識”はまだある。「悪玉」「善玉」の区別がその最たるものだ。
日本では動脈硬化の原因となるLDLコレステロールが悪玉、逆にそれを防ぐHDLコレステロールが善玉とされてきた。
動脈硬化学会は公式HPの〈脂質異常症治療のQ&A〉で、「(LDL値を)低下させることで動脈硬化性疾患が減少する」としている。HDLは「動脈硬化防御作用を有」し、血管に蓄積した過剰なコレステロールを引き抜き肝臓へと送るはたらきがあるとする。
そのため日本では、“悪玉”であるLDL値を下げることが重視される。健康診断では「120mg/dl未満」に抑えるよう指導され、「140mg/dl以上」は高LDLコレステロール血症と診断される。
ところが、「LDL値は低いほどいい」とするこの基準とは正反対の調査結果がある。なんと実際には「LDL値が高いほど死亡率が低かった」のである。
東海大学名誉教授の大櫛陽一・大櫛医学情報研究所長らの研究グループが神奈川県伊勢原市在住の男女約2万6000人(40歳以上)を平均8年間追跡調査したところ、男女ともLDL値が高いほど死亡率が低いことが判明した(2008年発表)。