──交渉はどのようなかたちで終わりを迎えたのか。

石原:栗原氏が「最終的な売却の値段を決めたのでお話しします」と言うので、僕と山東さんと伸晃の3人で、彼の指定した麻布台のアメリカンクラブで待っていた。

 待ち合わせに遅れて来た栗原氏は入ってくるなり、「すみません。許してください!」と言って、テーブルに両手をつき額をこすりつけるように頭を下げたんです。それで「申し訳ありません。あの島は政府に売ることになってしまいました」と言う。「いくらで売ったんだ」と聞いても言わない。「勘弁してください」と繰り返すだけだった。

──国有化が決まった後に野田佳彦首相とも面会している。

石原:野田君が「会いたい」と言うので、ある夜、官邸の裏にある秘密の地下の戸口から総理公邸に入って会った。その時に「君、最低でもあそこに灯台と舟だまりを造ってくれ。大した工費もかからないから」と頼んだが、野田君は言を左右して、「うん」と言わない。「政府の金だけじゃなくたって、18億円の寄付金もプールしてあるから、それを使ってもいい」と言ったが、野田君は何だか口ごもってばかり。それで結局、今日まで野ざらしですよ。

 東京に任せておいてくれたら、僕は好きなことをやった。知事も辞めなかっただろうし、あそこに施設を造ることだけは責任をもってやりましたよ。そのための有志もたくさんいた。残念でなりません。

※週刊ポスト2015年4月10日号

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