なにやら最近「童貞」がいじられているようである。かつての童貞ブーム!?と比較しつつ、コラムニスト・オバタカズユキ氏が童貞を擁護する。
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なにやら近ごろ「童貞」という言葉をよく目にする。「童貞」そのものが題材にされることも多いのだが、その応用版というか発展系というか、より対象を限定した新種の童貞もいろいろ指摘されている。
たとえば、現実での接点が少ないぶん過剰な幻想を抱いてしまい女性に対して尋常ならざる優しさを発揮する“童貞騎士”、30歳以上の性交未経験の男性にコミュニケーション不全他の大問題ありと訴えた新書の“中年童貞”、遠い過去に性体験はあるものの恋愛やセックスのない期間が長く続いて性の意識がこじれてしまっている“セカンド童貞”などだ。
性欲は、食欲や睡眠欲と並ぶ人間の3大欲求の1つだという。まったく食べず、まったく眠らなければ人は死ぬ。比して、性行為を絶っても死にはしない。だから3大欲求と祀り上げるほどのものかいなと私は疑問なのだが、まあ、禅僧でも性欲を抑えるのに相当苦労するらしい。凡人の我々がそれに拘泥するのは無理からぬ話で、諸般の事情で性行為に及べない人がそのことで自分を歪めてしまう例も確かにあるだろう。
けれども、だ。昨今の童貞ブームにはどうも殺伐感がある。マイナスなものをマイナスだとさらに強調、どう困った存在なのかを子細に描写するのは冷酷ではと思うのだ。
10数年前は違っていた。みうらじゅんや伊集院光たちが中心となって、性的コンプレックスは創造力の源泉だと主張する“童貞力”ブームがあった。彼らは、マイナスなものにプラスを探そうという意味で、“童貞力を見直そうぜ”と言挙げしたのだった。元童貞の現有名人が勝手に言ってら、という批判もありだが、これで救われた現役童貞君はたくさんいたに違いない。
今だって童貞をプラス評価する人たちはいる。でも、その人たちの目線は童貞力ブームのときと、だいぶ角度が違う。疎いジャンルなので深追いは止めておくが、童貞を主人公にしたアニメやマンガが大量にあって、「かわいい」とファンになる女性も多いとか。ただし、そういう人気の童貞君はあくまで二次元の世界の住人で、しかも一過性の消費の対象でしかない。そこから三次元の童貞君たちへの寛容な目線が生れるわけではない。