男性のクレームのつけ方にも問題があった可能性は残るが、店員が常識的に対応していれば大ごとにはならなかったはずだ。殴られた男性の知人はこう語る。
「本人は、『確かに最初に胸ぐらを掴んだのは自分だ。それは警察にも正直に伝えた。でも、それ以外は何も手を出していない』といっていました。トラブルの起きた日に警察署に行って証言した後、パトカーで自宅まで送ってもらう車内で、警官から『防犯カメラの映像を見た。看板の陰になって少し見えにくいところもあったが、基本的にあなたの証言通りだった。ただ、店員のほうも先に胸ぐらを掴まれたと被害届を出した』といわれたそうです。
病院で診てもらったところ、打撲などで全治10日の診断で、『咳をしても痛い』と仕事もしばらく休んでいました。なかなか痛みが取れなかったそうですが、『子供も小さいから、あまり長く休むわけにもいかない』と無理して仕事に復帰した」
今もまだ胸に痛みが残っていて整骨院に通っているという。
●取材/松永達也(ノンフィクションライター)
※週刊ポスト2015年6月12日号