◆一番の特徴はあの懐かしの「ダビング」的機能
AWAの一番の特徴は「プレイリスト」だ。これは、ユーザーが作った思い入れのあるプレイリスト(複数の曲をユーザーが自由に組み合わせ、あたかもCDのプロデューサーになれるような機能)に加え、独自のリコメンド機能(「これを聴いたらどうですか? という推薦機能)により、「まだ知らぬ、でも好きな音楽」と、「好きだった音楽」との再会が実現される。
現在50歳の松浦氏も含めアラフォー~アラフィフ世代ならば分かるだろうが、かつて人々はラジカセに空のカセットテープを入れ、好きな曲がラジオから流れてきたら慌てて「REC」ボタンを押し、46分や60分が埋まるとA面・B面に何の曲が入っているかを、カセットテープに付随する紙にすべて記入していた。それが進化するとダブルカセットで「再生」(アーティストのテープを使用)と「録音」(空のテープを使用)を同時に行い、オリジナルカセットテープを作っていた。あるいは持っている複数のCDから好きな曲だけを集めて1枚のMDに入れていた。これをあたかも「自分だけのコンピレーションアルバム」のようにして友達や好きな人に貸したりしていたが、これを現代に蘇らせたようなものである。
これまでにもYouTubeでは同様の機能はあったものの、著作権者が削除要請をした場合、歯抜けのプレイリストとなり、「昨日までは聴けたのに……」といった事態もあった。AWAの場合はすでに許可を取ったものであるだけに、突然アーティストやレコード会社が脱退しない限り、こういった事態は発生しない。
多くの大手が今回参加し、今後さらに増やしていくが、いきなり23のレーベル・プロダクションが参加したが、これは容易なことだったのだろうか。
「全然スムーズに立ち上がったとは思っていないですよ。日本に関してはとかく『ガラパゴス』と言われがちですが、特に音楽の分野でガラパゴスな部分が多いです。日本特有の権利関係が存在しており、サブスプリクションが欧米で流行っていながら、なかなか参入できなかったという障壁の原因にもなっていました。こうしたことを私達エイベックスは理解していたので、権利をクリアすることができたのではないかと思っています」(松浦氏)
レコード会社に対してはこうしてつぶさに権利関係をクリアして協力体制を築き、AWAに理解を示してもらえたわけだが、実際に曲を作るアーティストも松浦氏の把握している範囲では賛成しているという。それは当初はCDで音楽を売っていたが、その後ダウンロードでの販売も受け入れられたのと同様のことだろう。
「スマホという文化が今はあり、音楽もこの新しい文化を用いた新しい伝え方・広がり方が今回出てきました。アーティストもこの新しいスタイルの誕生によって、自分たちの音楽が今後広がっていくのかにすごく期待していると思いますよ。CDの重要性も変わりませんし、AWAができたことにより、新しい音楽のつくりかたといいますか、発表の仕方とか色々新しいものが出てくるのではないかと思います」(松浦氏)