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2015.06.06 15:59  週刊ポスト

モーレツ会社員全盛1970年代の官能小説 「棍棒」等勇壮表現

 戦後、小説家たちは摘発される危険をかえりみず、性愛表現を磨き上げながら官能文学という芸術を発展させてきた。累計1万冊以上の官能小説を読み、そこから得られた知見を『日本の官能小説』(朝日新書)にまとめた官能小説評論家の永田守弘氏(82)の案内で、官能小説の歴史を読み解いていこう(カギ括弧内は永田氏)。

 モーレツサラリーマンが社会で存在感を放ったのも1970年代の特徴だ。1968年に『示談書』でオール讀物新人賞を受賞した豊田行二は、政界や企業の裏事情と官能を結びつけた作品で人気を得た。貿易会社の秘書課長が副社長のコネで入社した若いOLを攻略する『課長の(秘)趣味』もそんな作風だ。

〈ゆっくりと出没運動を開始する。振幅を小さくして、コツン、コツンと恥骨をつくように動く。

「あーっ、わたし、へんになりそう……」

 星子は岡田の背中に爪を立て、大きくのけぞった。小さな振幅の出没運動が効いてきたのだ。年増女は大きな振幅の出没運動を好むが、若い女には、大きな振幅の出没運動よりも、小さな振幅運動のほうが効き目が大きい。通路の粘膜が、まだ、摩擦馴れしていないからだ〉

「豊田はペニスを表現するのに『ジュニア』をよく使っていましたが、次第に『欲棒』に移行していきました。これは豊田独特の言い回しで、当時よく使われていた『肉棒』よりも人間臭い感じがします。社会的な欲望を制約されていく男性たちに、いつまでも逞しさを持っていてほしいと願っていたのかもしれません」

 豊田を追走するように1973年にデビューして業界を牽引したのが北沢拓也だった。

「北沢作品にも女性を漁りまくる絶倫男が多く登場します。出世競争や人間関係に悩んで意欲を失った男性を鼓舞するような作風です。ペニスを誇示する表現も多彩で、『太い肉』『肉の柱』『棍棒』などは他の作家も使うようになりました」

※週刊ポスト2015年6月12日号

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