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2015.06.07 15:59  週刊ポスト

2000年代の官能小説は「回春モノ」が人気 進化と深化は続く

 戦後、小説家たちは摘発される危険をかえりみず、性愛表現を磨き上げながら官能文学という芸術を発展させてきた。累計1万冊以上の官能小説を読み、そこから得られた知見を『日本の官能小説』(朝日新書)にまとめた官能小説評論家の永田守弘氏(82)の案内で、官能小説の歴史を読み解いていこう(カギ括弧内は永田氏)。

 2000年代に入ると「回春モノ」が人気を得ていく。消沈した中年男が思わぬ女性運に恵まれて精気を取り戻すという作品群だ。霧原一輝『恋鎖』では、若い上司と衝突して退職に追いやられた中年男が、同窓会で再会した元カノの娘との関係に溺れる。

〈「見ないで……見ないでください」

 口ではそう言うものの、由美香はされるがままに尻を突き上げている。ぬめる尻たぶを撫でると、「ああ」という声が糸を引き、双臀がうねった。いきりたつ肉茎に指を添えて、裂唇にあてがった。足を大きくひろげているので、清楚な恥肉も花びらをひろげて、内部をあからさまにのぞかせている〉

 2000年代中盤以降はAVの影響なのか、「潮吹き」を描写する作品が増え始めた。草凪優『深なさけ』では富豪と間違えられた男が銀座のホステスに指技を繰り出す。

〈山中は、じゅぼっ、じゅぼっと卑猥な音をたて、指を抜き差しするピッチをあげていく。折り曲げた指でGスポットを刺激しながら、中であふれた発情のエキスを外に掻きだす。(中略)玲美は絶叫を轟かせて、股間から飛沫を飛ばした。端整なモデル顔をくしゃくしゃにして、ゆばりとは違う透明な分泌液をクジラのように吹きあげた〉

 作家たちは性器表現と同様に、作品のクライマックスに直結するオーガズム表現でも腕を競った。1980年代に活躍した南里征典の「おののくような震え」(『成城淑女館の帝王』)、1986年デビューの現役作家・一条きららの「甘美な陶酔のうねり」(『蕩ける女』)など、巧みな比喩で絶頂を演出した。

「ネットでエロ動画が簡単に手に入る時代ですが、官能小説で性欲のさらに奥にある『淫心』をくすぐられる読者も多い。官能小説はこれからも進化と深化を続けていくはずです」

※週刊ポスト2015年6月12日号

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