そのため、他人の細胞で培養した細胞シートを使う臨床研究に向けて準備が始まっている。軟骨は免疫反応が起こりにくいので、海外ではすでに他人の組織移植が当たり前に実施されている。軟骨細胞の入手にあたり、全国の骨バンクや海外からの輸入も検討されたが、トレーサビリティ(流通履歴)の問題を厚生労働省から指摘された。そこで多指症の手術時に廃棄される指から軟骨を採取することに。
「指を多く持って生まれた乳児から採取した細胞なので、成長が早く、2週間で約700枚、3週間では8000枚近くの細胞シートができます。他人の細胞なので、遺伝子異常や腫瘍にならないか、免疫反応が本当にないのかを調べ、最適な細胞シートを作った上で、実際の患者さんに移植します」(佐藤教授)
他人の細胞を使った臨床研究については、修復効果の高い細胞シートを作成し、条件に適応した患者を対象に近々、臨床研究が開始され、安全性と有効性の確認を行なう。患者自身の細胞による細胞シートの移植は、先進医療の申請を国に行ない、2年後をめどに導入を目指す予定だ。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2015年6月19日号