ライフ

【著者に訊け】上野千鶴子 セクシュアリティを語った対談集

【著者に訊け】上野千鶴子氏/『セクシュアリティをことばにする』/青土社/2200円+税

 このほど同時刊行された上野千鶴子さんの最新対談集、『思想をかたちにする』と『セクシュアリティをことばにする』。〈上半身と下半身、そろってひとりの人間〉と後書きにあるが……。

「下半身だけを取り上げて下さって、光栄です(笑い)」

 個々の時間と歴史的時間、私的領域と公的領域を切り結ぶことば。しかし性を語る言葉は専ら男性に占有されてきたと上野さんは言う。

「例えばSEXは民俗語彙でオマンコすると言うでしょ。女性器にサ変動詞がつくこと自体、主語が男性とわかります。女による女のための性表現はなかったんです。『女遊び』で売れた私は、〈四文字学者〉と呼ばれる完全な色物でした!」

 医師、作家など、計8名のゲストとの対話を本書は収め、例えば上野さんが〈連帯〉〈共助〉と言う時の切実さ、慈しみは、世間がフェミニズムに抱くおっかないイメージ(?)を超えて、誰の心にも優しく届くのだ。

「あらうれしい。そうなのよ。好きな男や嫌いな女だっていますよ。性的・社会的な搾取構造に安住する既得権益集団には優しくないだけ。私は敵に回すと怖いですからね、どうぞ遠慮なく怖がって下さい(笑い)」

〈フェミニズムは「個人的なことは政治的である」と言ってきた〉とある。台所やベッドの中のような私的経験が政治や社会制度等の公的領域とつながっていると考える女性学は、既存の学問から批判や黙殺もされてきた。

 が、その後『ケアの社会学』(2011年)に研究を進め、『当事者主権』(2003年)という視座のもと障害者やマイノリティともゆるやかに連携する近年の充実を見ると、客観性や中立性を強いる従来の言説の方こそ、単なる刷り込みに思えてくる。本書にもある。〈どんな問いであろうと、出発点にあるのは共感です〉と。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン