20年くらい前までは、免許をとった若者はスポーツカーに憧れたものだ。景気が低迷してからというもの、日本ではスポーツカー人気が下火になったと言われているが、まだまだ週末の峠にはスピードに夢中なドライバーが集う。
発売されたばかりの4代目となるロードスター(マツダ)と、2008年から6代目フェアレディZ(日産)の二つの人気スポーツカーについて、これまでにクルマを40台買ってきたフリーライター・清水草一氏(53)が評価した。
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走らせると、涙が出てきた。これは青春の味だ!
私が若かった頃に乗っていたクルマは、今考えると実に遅かった。5速マニュアルシフトを駆使し、練習中のヒール・アンド・トゥを必死こいて繰り出しても、現代のクルマで言えばプリウスより遅かった。遅かったからこそ飛ばせたのだ。今のスポーツカー、たとえば日産・フェアレディZあたりで飛ばしたら、速すぎてすぐ捕まってしまう。制限速度は昔と変わっていないのだから。
新型ロードスターは、昔のスポーツカー同様、今の基準で言えば決して速くない。エンジンの排気量はたったの1500cc。先代ロードスターは2000ccだったから、ずいぶんと小ぶりになったが、これが実にちょうどよく感度良好で、ものすごく気持ちいい。やはり美女は少し小柄な方がいい。
カーマニア的に言うと、カーブでの車体の傾き方ひとつ取っても、昔っぽいウブな感覚があって、女性と初めて手をつないだ時のようなトキメキがあり、それが懐かしくもエロいのである。新設計のマニュアルシフトも軽い力で操作でき、ただ普通に走っているだけで気持ちいい。五十路を過ぎて、ついに理想の女性に出会ってしまった気分だ。