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【書評】若い女性が整形をしてまで宇宙人的デカ目を作るワケ

【書評】『整形した女は幸せになっているのか』北条かや著/星海社新書/本体860円+税

北条かや(ほうじょう・かや):1986年石川県生まれ。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。著書に自らのキャバクラ嬢体験を元にキャバクラを社会学的に分析した『キャバ嬢の社会学』(星海社新書)。おもにネットメディアで執筆。

【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)

 メイクなのか整形なのか、異様なデカ目のギャルの顔を見て化け物か宇宙人のように感じていたが、本書を読んで、彼女たちがあのような顔を作り上げていく心理過程が少しは見えたような気がした。

 本書が引くある調査によると、18歳から39歳の女性のうち整形経験者は11%。スマホで自撮りし、整形前後とその過程の顔をネットにアップする若い女性も増えている。物理的な力を加えて二重を作る整形的なメイクも当たり前だ。

 なぜ整形するのか。整形すれば幸せになれるのか文献を読み解き、経験者を聞き取り調査し、整形体験をエッセーに書いた作家中村うさぎをインタビューするなどして、そのテーマの解明を試みたのが本書。

 経験者の多くが語るには、整形する理由は、コンプレックスの解消というより「理想の顔」の追求にあるらしい。整形にはまる女性には〈「自分」への高い関心とナルシシズム〉があり、整形ブームは〈「私探し・自分探しブーム」にも似ている〉というのだ。

 だが、そこに落とし穴がある。「理想」を追求し続けるうちに、もともとの素顔と、作った「理想の顔」のどちらが本当の自分なのかがわからなくなり、「理想の顔」が本当の自分に思えてくるというのだ。倒錯である。

 そして、もしも〈「客観性」を失った美の基準〉を適用して化粧、整形をすれば誰もが認める美人というより「異形」に近づく。その極端な例がマイケル・ジャクソンだ……。

 具体例は本書に譲るが、さすが中村うさぎには真実を突く秀逸な言葉が多く、思わず唸らされる。著者がやや他人の言葉に頼りすぎるきらいはあるものの、なかなか示唆に富んだ一冊だ。

※SAPIO2015年8月号

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