2007年には、離婚した際に妻が夫の年金の原則半分を受け取れる「離婚時の年金分割」が導入され、熟年離婚の引き金になるのではないかと話題になったが、この制度で対象になるのはあくまで結婚期間中に夫が支払った保険料に応じて受け取る年金(厚生年金の報酬比例部分)に限られる。企業年金は含まれないので離婚後の企業年金は基本的には「夫のもの」となる。

 さらに「制度が変わるリスク」にも注意を払う必要がある。前述のシミュレーションはあくまで現行制度に基づくもの。前出・山崎氏が指摘する。

「昨年、厚労省の社会保障審議会(企業年金部会)では、退職所得控除の縮小が議論されました。たとえば、現状は勤続43年なら2410万円、38年なら2060万円の控除枠を引き下げ、1500万円くらいから課税する可能性もある。年金方式に関係する公的年金等控除縮小の議論もあるが、一時払いのほうに先に網を張られるのではないか」

 社会保障分野において現役世代の負担増が取り沙汰される中、「高齢者が優遇されている」という批判を避けるために、サラリーマンの退職金が狙い撃ちされるというのだ。

 控除の縮小が実施されれば「一時払いで受け取っても、自分で投資して殖やさないと、年金方式に比べて損」(山崎氏)という状況が生まれる。投資が面倒、自信がないという人には年金方式の利点が大きくなる。

「第3の企業年金」制度創設も含め、最新の情報に注意しながら、慎重な判断が必要となる。

※週刊ポスト2015年8月7日号

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